2019年11月13日水曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年11月度の授業

令和元年11月10日(日)に11月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、ラグビーワールドカップで有名になった日本代表の合言葉「ワンチーム」や「戦い」に関係する、中国の古典『孫子』の中の言葉を3つ学びました。『孫子』は、紀元前500年頃の武将で軍事研究者である孫武が書いたと伝えられる兵法書で、武田信玄や吉田松陰、ナポレオンも愛読したそうです。

◆善く戦う者は、これを勢いに求めて、人に責(もと)めず、ゆえによく人を択びて勢いに任ぜしむ。意味は「すぐれたリーダーは一人の力に期待しすぎない。チーム全体に勢いをつけることに努力する。」です。

◆善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以って敵の勝つべきを待つ。意味は「まずは相手のことより、自分のこと。負けないための準備をしっかりしよう。」です。

◆越人と呉人の相い悪(にく)むも、その舟を同じくして済(わた)りて風に遇う当たりては、相い救うこと左右の手の如し。意味は「仲が悪いメンバーも、納得できる共通の目的があれば、助け合って努力することになるよ。チームワークによって目的は達成できるんだ。」です。

まさに、ラグビーワールドカップで身近に感じることができた、現代に生きる言葉です。

【第二時限】金田新先生(元トヨタ自動車専務 元NHK専務理事放送総局長)

 金田先生は、トヨタ自動車でカナダに4年間、その後、同社広報の責任者を務められ、自動車の外国貿易の仕事に携わられました。授業では「自動車はどこまで進化するか?進化しなければいけないか」と題して、自動車の進化の歴史と今後について解説していただきました。
 20世紀の自動車産業は3回事業進化しました。最初が「規模の事業」で1908年のフォードモデルTの時代です。19世紀末のジョブショップ生産から大量生産、流れ生産へと進化しました。第二は「マーケティング事業」で、1925年にGMがクローズドボディ、モデルチェンジで台頭し、フォードを凌駕します。第三は「グローバルマーケティング事業」で世界市場が成立し、トヨタが生産の平準化、トヨタ生産方式、高い品質管理、効率輸送で「進化を遂げました。」そして、21世紀の自動車産業界には、グーグルや中国、インドなどのメーカが新規参入してきています。
 今後は、①みなさんの夢、技術がすべて解決するという信念、②実現策、解決策としての技術の進化、③次の進化を担う人、組織が大切です、と金田先生はおっしゃっています。


 次回12月度の授業は、12月15日(日)(第3日曜日)を予定しています。第一時限は10月度に予定していた北岡和義先生(元日大教授、アメリカ在住27年)、第二時限は竹中透先生(本田技術研究所 主席研究員・工学博士)をお招きします。竹中先生の講義タイトルは「ASIMOとその技術の応用」です。

2019年10月10日木曜日

小田原寺子屋スクール 授業中止のお知らせ

 令和元年10月13日(日)の授業は、台風19号の影響により中止いたします第二時限に予定していました北岡和義先生の授業は、12月15日(日)の第一時限に行います。
 次回、11月度の授業は11月10日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は金田新先生(元トヨタ自動車専務、元NHK専務理事放送総局長)をお招きします。金田先生の講義タイトルは「自動車はどこまで進化するか」です。

2019年9月14日土曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年9月度の授業

令和元年9月8日(日)に9月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、現代の情報化社会に通じる、中国の3つのことばを学びました。
 一つ目の「流言は知者に止(とど)まる。」は、古代中国の思想家、荀子のことばで、無責任な噂や根拠のない話が横行しても、ものごとを冷静に判断できる人には通用しない、という意味です。流言は「詩経」や「書経」にも登場する根も葉もない噂のことで「流言蜚語」と4文字で表現することもあります。「蜚」という字は、ゴキブリを意味します。アメリカでは、トランプ大統領が大型ハリケーン「ドリアン」の進路予想をめぐって根拠のない話をこしらえ、広めているというニュースが報じられています。一方のトランプ氏は、フェイク(偽)ニュースが自身の予想を認めようとしない、と主張しています。栗田先生は、様々な情報に接する時、自分はどう考えるかが大切で、私たち一人ひとりが「知者」にならなければいけいないとおっしゃっています。
 二つ目のことば「好事は門を出でず、悪事は千里を行く。」(『北夢瑣言』より)は、善いことをしてもあまり世間に知られないが、悪事はたちまち千里の彼方まで知れ渡る、という意味です。三つ目のことば「囁き千里」(『淮南子』より)は、ないしょで話したことでも、すぐに人々に知られてしまう、という意味で「ささやき八丁」「こそこそ三里」ということばもあります。

【第二時限】伊藤みろ先生(フォトアーティスト・著述家、文化芸術プロデューサー)

 伊藤先生は、ドイツとアメリカで永住権を取得され、フォトアーティスト、映像作家として世界の写真文化の第一線で活躍されています。現在取り組まれている文化芸術プロジェクトは、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」をきっかけに、平和に貢献をしたいとの願いが出発点になっているそうです。アートを通して、世界の人々が「ひとつ」であるという人々の心のつながりを訴えていきたいとおっしゃっています。
 授業では、法隆寺回廊の柱やモナリザの微笑みと同じ起源をもつ中宮寺の菩薩像など、奈良には古代ギリシャ文化の影響を受けた建築物や仏像があることや、シルクロードと仏教文化の広がり、奈良・東大寺の大仏さまの起源などについて、石仏・仏像の写真を交えながら解説していただきました。伊藤先生から生徒たちへのメッセージは「世界の平和に役立つ人になってほしい」です。
 授業の最後に、バレエ・ダンサーの新井春双氏に伎楽バレエを披露していただきました。

 次回、10月度の授業は、10月13日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は北岡和義先生(元日大教授、アメリカ在住27年)をお招きます。北岡先生の講義タイトルは「なぜアメリカを目指したのか~戦後日本史の断面」です。

2019年8月3日土曜日

小田原寺子屋スクール 特別公開講座

 令和元年6月30日(日)に小田原市生涯学習センターけやきに於いて、小田原市・小田原市教育委員会との共催で第五回特別公開講座を開催いたしました。多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。
 <第1部>「激変の時代の子育てはどうしたらよいか」
       和田重宏先生 はじめ塾第2代塾長   聞き手 石塚正孝 理事長
 <第2部>パネルディスカッション「人口減少・高齢化社会の行方と地方都市の未来への提案」
       司会 鈴木款 フジテレビ解説委員
       パネラー 黒岩祐治 神奈川県知事
            磯崎功典 キリンホールディングス社長
            宮崎純  ローソン常務執行役員
            福井康代 (株)ナビット社長


 9月度の授業は、9月8日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は伊藤みろ先生(文化芸術プロデューサー 映像作家)をお招きします。伊藤先生の講義タイトルは、「シルクロードと東大寺に残されたヘレニズム文化」です。  

2019年6月11日火曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年6月度の授業

 令和元年6月9日(日)に6月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、先月に引き続き、渋沢栄一とその著書『論語と算盤』について学びました。
 『論語』の中に「子曰く、富と貴きとはこれ人の欲するところなり。その道をもってせずしてこれを得れば処(お)らざるなり。貧と賤とはこれ人の悪(にく)む所なり。その道をもってせずして、これを得れば去らざるなり」という言葉があり、その意味は「財産と地位とは世間の人が欲しがるものだ。しかし正しい方法で得たものでなければ、それにあぐらをかいているのはおかしい。貧乏や身分が低いのは、みんなが嫌がるものだ。でも、自分は悪くないのに貧賤な暮らしを送らざるを得ないとすれば、それは恥ずかしいことではない。」です。
 渋沢栄一が生前、論語の一節を変えて作った言葉「為君子商 無為小人商」は、「君子の商となれ、小人の商となることなかれ」と読みます。ビジネスで成果を上げるだけではなく、社会に貢献する志を持つのが君主であり、不義・不正を犯すくらいなら、あえて『富貴栄達』の道をとらない覚悟をもつことも君子の商であるということです。渋沢栄一が考えた言葉「議理合一」は、お金を儲けるのは、りっぱな仕事だが、きちんと道徳を守り、もしお金が儲かったら、社会福祉など、そのお金を社会のために還元しなければいけない、という教えを説いています。

【第二時限】窪田哲夫先生(元拓殖大学日本文化研究所客員教授)

 今回は、窪田先生の故郷、新潟県長岡について紹介して頂き、幕末に活躍した長岡の英傑「河井継之助」について学びました。
 河井継之助は、近代的合理主義の考え方を持ち、武士として、長岡藩の重臣として、新政府軍に対抗する道を選んだ英雄的な人物です。江戸をはじめ、遠くは長崎まで遊学の旅に出て、歴史や世界の動き等、物事の原理を知ることに努め、藩政改革を実践しました。「武装中立」の考えを持ち、新政府軍との談判で戦闘を断りますが決裂、北越戦争へと突入します。河井継之助率いる長岡藩は、近代兵器を駆使して新政府軍と約3ケ月にわたって戦い、この戦いで負傷した継之助は42歳で亡くなりました。
 授業では、河井継之助が残した多くの名言の中から、「一忍可以支百勇、一静可以制百動」「民は国の本、吏は民の雇い」「漫然と多読するも、何の益かあらん。読書の功は細心精読するに在り」「志の高さ低さによって、男子(ひと)の価値がきまる」などについて解説して頂きました。有名なことば「やって見せ、言って聞かせて、させて見て、讃めてやらねば、人は動かじ」は、山本五十六が河井継之助のやり方を表現したものだそうです。
 窪田先生は、今回の授業を通じて、「ふるさと」やふるさとの人物、そして両親、兄弟、仲間を大切にしましょう、尊敬する人物を持つこと、とおっしゃっていました。


 次回、7月度の授業はありません。6月30日(日)13:15~小田原市生涯学習センターけやきホールにて特別公開講座を行います。詳細は、「特別公開講座尾のお知らせ」をご覧ください。

2019年6月7日金曜日

特別公開講座のお知らせ

 令和元年6月30日(日)に特別公開講座を開催いたします。事前申し込み不要、参加費は無料です。多数の方のご参加をお待ちしています。


2019年6月5日水曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年5月度の授業

 令和元年5月12日(日)に5月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月の授業のテーマは、新しい一万円札に登場する渋沢栄一と『論語』です。渋沢栄一は、1840年に現在の埼玉県深谷市の豪農の子として生まれました。若い頃に江戸幕府に仕え、明治時代には大蔵省に勤務、その後、第一国立銀行をつくりました。現在の東京ガスや東京海上日動火災保険など約470社の会社の設立にかかわった実業家です。
 1916年に出版された書物『論語と算盤』の中で、渋沢栄一が取り上げている『論語』の一節を学びました。「子路曰く、民人あり、社稷(しゃしょく)あり。なんぞ必ずしも書を読みて、しかる後に学ぶとせん。」は、孔子の弟子の子路のことばで、「人々がいて、郷土のお社があるような環境であれば、現実から十分に学ぶことができます。どうして書物を読むことだけが、学ぶと言えるのでしょう。」という意味です。口ばかりで実践できないものはダメだということです。渋沢栄一は、机にすわって読書するだけを学問と思うのは間違っている、勉強を続けることと同時に生活の中から学ぶことを心がけるよう説いています。

【第二時限】関雅樹先生(元JR東海専務 新幹線鉄道事業本部長)

 関先生は、JR東海で新幹線鉄道事業本部長を務められ、現在、双葉鉄道工業の社長としてご活躍中です。授業では「東海道新幹線の技術-安全・進化する鉄道技術-」と題して、日本の大動脈である東海道新幹線とその技術について解説して頂きました。
 東海道新幹線の最高速度は285km/h、1日の利用者数は47万人、運行本数は368本にも上ります。たゆまぬ進化により、1964年の開業以来、乗車中のお客様の死傷事故はゼロ、1列車あたりの平均遅延時間は0.9分です。これは、安全、安定輸送を最優先し、ハード・ソフト対策に積極的に取り組んできた成果、社員の士気・規律・練度により裏打ちされた成果であるということを教えて頂きました。
 授業の後半では、動画を用いて地震対策の技術を解説して頂き、高架橋柱のせん断破壊を抑制するために開発された、鋼板による耐震補強やダンパーブレース工法と呼ばれる技術、列車の脱線を防止する脱線防止ガード、軟弱地盤対策のシートパイルについて学びました。また、東海道新幹線の路線には50ケ所の地震計、周辺の広範域には21ケ所のテラス(早期地震警報システム)が設置され、地震を検知して列車を緊急停止させることができるそうです。


 次回、6月度の授業は、6月9日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は窪田哲夫先生(元拓殖大学客員教授)をお招きします。窪田先生の講義タイトルは、「幕末の英傑「河合継之助」と佐藤一斎の「言志四録」-私に影響を与えてくれた故郷、長岡の歴史的人物-」です。

2019年4月17日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成31年4月度の授業

 第十期がスタートしました。平成31年4月14日(日)に第1回目の4月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、授業のはじめに、日本最古の歌集で新元号「令和」の典拠である『万葉集』について解説して頂きました。『万葉集』には、舒明天皇の時代から淳仁天皇の時代まで約130年の間の長歌、短歌、旋頭歌(せどうか)など合わせて約4500首と漢文で書かれた詩、手紙などが収められています。旋頭歌とは、五七七・五七七の六句を定型とする歌です。『万葉集』は飛鳥時代、奈良時代のもので、すべて漢字で書かれています。ひらがな、カタカナは、その後の平安時代になって漢字をもとに作られました。
 授業後半では、『論語』の中から「巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮(すくな)し仁」ということばを学びました。意味は「お世辞たらたら、顔はニコニコには気をつけなさい。愛想のよいのはうわべだけ、本当はそんな気持ちはないのだよ。」です。「巧言」は、本当はそう思っていないのに口先だけで上手に言うことです。「令」は「善い」という意味で「色」は顔色です。「令色」は相手に気に入られようとして顔色を作ることです。「仁」はおもいやりやいつくしみ、「鮮し」は「少なし」と同じ意味です。単に「巧言令色」という場合も「鮮し仁」の意味を含んでいます。

【第二時限】鈴木款先生(フジテレビ解説委員)

 鈴木先生は、フジテレビの「報道2001」のディレクター、NY支局長、経済部長を経て、現在、解説委員として活躍されています。フジテレビに入社されたのは、1991年の湾岸戦争で戦地バグダッドに残って取材を続けたアメリカ人記者、バーナード・ショーに感銘を受けたことがきっかけだそうです。
 授業では「ネット時代のテレビの役割」と題し、ネットがもたらした情報収集スタイルやメディア世界の変化、ニュースとは何か、誤報とフェイクニュース、記者とディレクターの違い、私たちがメディアと接していく上で大切なことについて解説して頂きました。
 近年、十代の若者を中心にネットの利用時間が増加する一方で、テレビの視聴時間や新聞の閲読時間は減少傾向にあります。また、SNSによって誰もが情報の送り手になることができる時代へと変化する中、人々が信頼できる情報を得るのに利用するメディアは、テレビが54%と最も多く、続いてネットと新聞が約20%という調査結果が出ています。今後、私たちがフェイクニュースや不正確な情報に惑わされないようにするためには、メディアが発信する情報を読み解く能力「メディアリテラシー」を高めることが大切です、ということを教えて頂きました。


 次回、5月度の授業は、5月12日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は関雅樹先生(元JR東海専務取締役 新幹線鉄道事業本部長)をお招きします。関先生の講義タイトルは、「新幹線鉄道における地震対策」です。

2019年3月14日木曜日

小田原寺子屋スクール 第十期生徒募集のお知らせ

 みなさんは、どんな夢や希望を持っていますか。将来、どんな人になりたいですか。あなたの夢や希望をかなえるために、学校や学習塾の授業、スポーツクラブでは学ぶことができない大切なことがあります。小田原寺子屋スクールでは、様々な世界で活躍されている先生方からその大切なこととは?について教えていただきます。また、先生方がみなさんと同じ年の頃にどんなことを考え、なぜその道に進もうと思ったのか、どんなことを実行されてきたのかなど、貴重なお話を聴くことができます。
 これまでに、新聞記者、オリンピックの金メダリスト、宇宙の超新星を研究する博士、作家、女優、アナウンサー、画家、実業家、・・・と、多くの先生方に授業をしていただいています。みなさんも月に一度、小田原寺子屋スクールで一緒に学びませんか。
◆受講料:無料

お申込みは、氏名(フリガナ)、学年、住所、保護者氏名、連絡先(電話番号)を記載の上、下記メールアドレスへお送りください。
info@terakoya-odawara.com
問い合わせ先 070-3525-1058 寺子屋スクール事務局(川口)

2019年3月13日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成31年3月度の授業

平成31年3月10日(日)に3月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、中国の古典『論語』について学びました。『論語』は、孔子とその弟子たちや当時の各国の権力者らとの対話や、孔子の振る舞いなどを伝えたもので、人間の最高の道徳は「仁」であると主張します。「仁」とは「思いやり」「慈しみ」です。『論語』が日本に伝わったのは、仏教よりも早く、513年頃といわれています。
 佐賀県多久市には、孔子をまつる「多久聖廟(たくせいびょう)」という孔子廟があります。「多久のスズメは論語をさえずる」といわれる程、論語教育が盛んで、「論語カルタ」という『論語』の中の100の教えを集めたカルタがあるそうです。
 今回、授業で学んだ3つの言葉とその意味を紹介します。

◆「己の欲せざるところは、人に施すこと勿(なか)れ。」は、自分が人からされたくないことは、自分も人にしてはいけない、という意味です。
◆「学びて思わざれば則ち罔(くら)く、思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し。」は、知識がいくらあっても、その知識をヒントにして自分で深くものごとを考え、その考えを発展させなければ意味がない、ということです。
◆「過ぎたるは猶及ばざるがごとし。」は、ものごとには適当な度合というものがあり、過不足のない、ちょうどいいことこそ大切です、という意味です。

この中でも、特に「己の欲せざるところは、人に施すこと勿れ。」が大切です、と栗田先生はおっしゃっています。

【第二時限】厚地純夫先生(JR東海専務執行役員)

 厚地先生は、JR東海のきっぷの販売システム開発の第一人者です。授業では「きっぷ」の役割と、それが今後どのように変わっていくのか、について解説して頂きました。
 きっぷには、列車に乗る日、乗る駅と降りる駅、運賃、鉄道会社(路線)の4つが記されています。きっぷは、ここに書かれている通りにお客様をお運びします、という約束を表しています。東海道新幹線では「のぞみ」だけでも1時間に最大10本も走っていますが、紙のきっぷでは、買う時も乗る列車を変更するために切符を交換する時も、駅の窓口に並ばなくてはなりません。そこで、自由に列車を予約・変更でき、かならず座って行くことができるように、スマホ予約とICカードによるチケットレス(きっぷがいらない)のシステムが開発されました。2019年2月時点、このサービスの利用件数は1日当たり約20万件とのことです。今後はICカードを持っていない海外のお客様のために、QRコードの導入が検討されています。
 2027年に開業予定のリニア中央新幹線は、まずは品川~名古屋で運行が開始されます。名古屋でリニアと新幹線を乗り換えることになりますが、スマホ予約とチケットレスのサービスなら、次に乗る列車を車内で変更することもできます。
 厚地先生のメッセージは「なんで?なんだろう?を大切に」です。きっぷをなくすサービスをつくるには、きっぷのことを、「なんでこうなっているのかな」とたくさん考え、完全に知ることが必要です。ふだん出会ういろいろなことに対しても、「なんで」という気持ちをもって接してください、とおっしゃっていました。


 次回から第十期が始まります。4月度の授業は、4月14日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は鈴木款先生(フジテレビ解説委員)をお招きします。鈴木先生の講義タイトルは「ネット時代のテレビの役割」です。

2019年2月13日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成31年2月度の授業

平成31年2月10日(日)に2月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、中国の古典『菜根譚(さいこんたん)』から、いくつかの言葉を学びました。『菜根譚』は、今から四百年ほど前に洪自誠(こうじせい)という人が書いた書物で、三百五十七の短い文章から成り立っています。中国ではあまり重要視されませんでしたが、日本では江戸時代から読まれ、とくに明治時代には多くの人に愛読されたそうです。『菜根譚』には、儒教、道教、仏教の思想が合わさってできた、生き方のコツや人生の知恵が詰まっています。以下に、授業で学んだ言葉の中から3つを紹介します。

 ◆心やや怠荒(たいこう)せば、すなわち我より勝れるの人を思え。すなわち精神自ずから奮わん
 ◆事やや払逆(ふつぎゃく)せば、すなわち我に如かざるの人を思え。すなわち怨尤(えんゆう)自ずから消えん 

 一つ目は「怠け心が生まれたときは、自分よりすぐれた人のことを考えなさい。そうすれば、またやる気が湧いてくるよ。」、二つ目は「ものごとが思いどおりにならないときは、自分より条件の悪い人のことを考えなさい。そうすれば、しぜんに不満が消えるだろう。」という意味です。

 ◆冷より熱を視て、しかる後に熱処(ねつしょ)の益なきを知る

 この言葉は「冷静な状態になってから、熱狂していたときのことを振り返ってみると、熱に浮かされて動き回っていたことの空しさがわかってくるものです。」という意味で、頭に血がのぼっている時などに立場を変えてみることを説いています。このように『菜根譚』は、私たちに心のバランスをとることの大切さを教えているのです。

【第二時限】萩原一夫先生(経営支援NPOクラブ理事、元三井物産キャピタル社長)

 萩原先生は、大学4年生の時にドイツに関心を持たれ、三井物産に入社後、約7年半ドイツに勤務されました。授業では「ドイツの戦後リーダーとドイツ現代史」と題して、歴代の首相とその時代について詳しく解説して頂きました。
 1945年にヒトラーがベルリンの地下壕で自殺します。ドイツおよびベルリンは4つに分割され、米、ソ、英、仏によって占領されます。1948年、首都ベルリンの支配を巡って、ソ連が米国を中心とする西側連合国と対立しベルリンを封鎖します。西側はドイツ人によって起草された憲法をもって、1949年にボンを首都とする西ドイツを成立させました。こうしてドイツは東西に分断され、冷戦時代は1989年のベルリンの壁崩壊、1990年のドイツ統一までの40年間続きます。
 ドイツでは、戦後8人の首相が誕生します。初代アデナウアーは73歳で首相に就任、1963年に仏との間で結んだ独仏友好協力条約は今日のEUへと発展しました。授業では、1990年のドイツ統一時代に首相を務めた6人目のコール、その後ドイツの財政の黒字化に貢献した7人目のシュレーダー、物理学者でもあり脱原発を打ち出した8人目のメルケルについて解説して頂きました。その中でも、萩原先生が最も尊敬されている人物が4人目のブラントです。ブラントは、若い頃から反ナチス運動に奔走し19歳の時にノルウェーに亡命、その後もナチスに追われますが、1945年にドイツが敗戦すると母国に戻り、西ベルリン市長を経て4人目の首相に就任します。これまでの東との対立姿勢を180°転換し、ソ連のブレジネフ書記長とモスクワ条約を締結、紛争をなくし平和を約束します。ユダヤ人への謝罪、東西ドイツ首相会談の実現など、数々の功績が認められ、1971年にノーベル平和賞を受賞、「ブラントなくしてゴルバチョフなし」と言われています。
 授業の最後に、生徒へのメッセージとして、元ドイツ大統領のヴァイツゼッカーの言葉を紹介して頂きました。「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる。若い人たちに過去の歴史の過ちの責任はない。だが、その過ちがなぜ生じたのかを知る必要がある。」


 次回、3月度の授業は、3月10日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は厚地純夫先生(JR東海専務執行役員)をお招きします。厚地先生の講義タイトルは、「きっぷの話 新幹線からリニアへ」です。


2019年1月16日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成31年1月度の授業

平成31年1月13日(日)に1月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、「漢字大国」と呼ばれる台湾の漢字について学びました。中国の漢字は、簡略化された「簡体字」(かんたいじ)で、日本人が見慣れた漢字と異なりますが、台湾では「繁体字」(はんたいじ)と呼ぶ、日本の漢字とほぼ同じ文字を使っています。略字はなく、たとえば「学校」の「学」は、台湾では「學」です。
 授業では、栗田先生が台湾一周旅行で撮影された写真を用いて、台湾の漢字を解説して頂きました。「車站」(しゃたん)は「鉄道の駅」、「旅游服務中心」(りょゆうふくむちゅうしん)は「観光案内所」です。「中心」は文字通り「センター」の意味です。「月台」(げつだい)は「駅のホーム」で、日本語では「歩廊」になります。「行李」(こうり)は、昔の日本では衣類などを入れて保存する、柳の枝や竹などで編んだ箱のことですが、もともとは「旅の荷物」や「手荷物」という意味です。「小心」(しょうしん)は「気をつけましょう」、「當心」(とうしん)は「危険、注意!」という意味で「小心」の場合よりも、もっと重大な場合に使われます。
 台湾は日清戦争後の50年間、日本の植民地であったことや、台湾には富士山よりも高い、標高3952mの玉山(ぎょくざん)という山があり、植民地時代に明治天皇がこの山を新高山(にいたかやま)と名付けたことなど、歴史についても教えて頂きました。

【第二時限】吉川伸治先生(神奈川県内広域水道企業長、前神奈川県副知事)

 吉川先生は、神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市で設立した特別地方公共団体、県内広域水道企業団で企業長を務められています。授業では、水道の歴史、世界の中の日本、日本の中の神奈川の水道、水道の課題について教えて頂きました。
 世界で初めて建設された水道は、今から2300年前、水不足を解消するために作られた古代ローマの水道橋です。水道はコンクリート製で水質まで管理されていたそうです。日本の水道の発祥は500年程前、小田原城下の「小田原早川上水」です。徳川家康は、小田原用水をお手本にして江戸に水道を引きました。近代水道は明治20年の横浜に始まり、函館、長崎と港湾都市から整備されていきました。水道水を安全に飲める国は世界に15ケ国あり、日本はその中の1つです。日本の水道水は70以上の水質基準項目で厳しく管理され、世界最高の安全水準にあります。
 神奈川県には4つのダムと、相模川と酒匂川の2つの河川があり、平成13年に宮ケ瀬ダムが稼働して以来、取水制限なく安定取水が実現できています。また、神奈川の水はよごれやにごりが少なく、東京都の「高度浄水法」とは異なる「ろ過法」によって作られています。水道の課題は、地震や大雨等の自然災害から水道施設を守ること、人口減少・給水量低下に伴う収入減と水道料金問題、水道事業に携わる技術者の確保などです。企業団では、酒匂川と相模川をつなぎ、どちらでも水を流せるようにする防災対策を進められています。最後に、水循環の仕組みと水源環境保全、山や森林の整備の大切さについて教えて頂きました。


 次回、2月度の授業は、2月10日(日)を予定しています。第一時限は栗田先生、第二時限は萩原一夫先生(認定NPO経営支援NPOクラブ理事・元物産キャピタル社長 ドイツ三井物産経理・財務担当)をお招きします。萩原先生の講義タイトルは、「ドイツの戦後リーダーとドイツ現代史」です。