2018年10月17日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年10月度の授業

平成30年10月14日(日)に10月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は中国の古典から3つのことばを学びました。一つ目は「虎の威を借る」です。権力のある人、社会的な地位の高い人などの権威を借りて、大きな態度をとる、という意味です。虎に捕まえられたキツネが言葉巧みに虎を説き伏せ、自分のあとをついてくるように言います。虎がキツネの後を歩くと獣たちは恐れて逃げた、という話が中国の古典『戦国策』に出てきます。ギリシャの『イソップものがたり』にも、ライオンの毛皮を着たロバを恐れて人間や獣たちが逃げた、というとてもよく似た話があります。「虎の威を借る」の例として、1906年にドイツで実際に起きた事件のことを教えて頂きました。当時、権威があった陸軍の大尉の制服を着た犯人が、14人の兵隊を集めてベルリン郊外の小さな都市の市役所を占拠し、市の金庫のお金を全て一人で持ち去ってしまったのです。兵隊たちも市長もみんな、大尉の制服にだまされたのでした。
 二つ目のことば「十読は一写に如かず」は、繰り返し十回、本を読むよりも、その内容を書き写すほうが内容が頭に入る、という意味です。三つ目のことばは「一歩は一歩より高し」です。一歩一歩坂をのぼる。前の一歩より、そのあとの一歩のほうが高いところにのぼっている。努力を重ねれば、それだけ進歩する、という意味です。

【第二時限】石川寿一先生(南足柄寺子屋塾代表)

 石川先生は、南足柄寺子屋塾代表を務められ、また経営コンサルタント、写真家、話し方講座講師として多方面で活躍されています。講義では、49年間で巡った世界107地区の”旅”を通じて、経験されたこと、学ばれたことを教えて頂きました。
 27才のときにエディンバラを訪問され、日本が東の端でヨーロッパが真ん中にある世界地図を見て、初めて”極東”の意味を理解できたそうです。また、アイスランドのお土産、小さな地球儀には日本がよく分からず、日本の上にKOREAと印刷されていました。日本は世界第3位の経済大国ですが、ヨーロッパから見た日本は極東の一つの国に過ぎず、私たちの見方と違うということです。
 ”旅”を通じて、自分の目で見ること、現場に身を置くことの大切さを知り、日本の素晴らしさを再発見したり、五感が養われたり、3つの楽しみ(行く前、行った先、行った後で違った楽しみ)があったり、と多くの良さがあることを教えて頂きました。また、イスラム教のラマダン、エジプトの相乗りタクシー、イタリアにある骸骨寺、ケニアのマサイ族など、実際に体験されたエピソードを交え、文化や習慣の違いを紹介して頂きました。これから人生百年時代、まだまだ旅を続けていかれるそうです。


 次回、11月度の授業は、11月11日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は鬼頭宏先生(静岡県立大学学長)をお招きします。鬼頭先生の講義タイトルは、「日本の人口問題を考える-人口から読む日本の歴史-」です。

2018年10月2日火曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年9月度の授業

平成30年9月9日(日)に9月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は『千字文』について勉強しました。「千字文」とは、子どもたちが字を習うときの教科書です。6世紀の中国・梁の皇帝の命令で、周という先生が選んだ1000の漢字から成り、4字ずつの組み合わせが延々と続く長い詩です。1000の漢字はすべて違った文字で一字も重複していません。
 『千字文』は、朝鮮半島や日本でも漢字の勉強や習字のお手本として使われました。日本には、いつ入ってきたのか、はっきりしていませんが、8世紀に始まる奈良時代にはすでに伝えられていたようです。日本の常用漢字2136字のうち767字が『千字文』に出てきます。
 授業では『千字文』の中から、二つのことばを学びました。「天地玄黄 宇宙洪荒」は「天の色は黒く、地の色は黄色い。空間や時間は広大で、茫漠としている。」という意味で、『千字文』はこの8字から始まります。「宇宙」という言葉がこんな昔からあったということを学びました。もう一つのことば「知過必改 得能莫忘」は「過ちに気づいたら必ず改め、大切なことを学んだら忘れるな。」という意味の教えです。

【第二時限】田嶋享先生(ヤオマサ名誉会長)

 ヤオマサ名誉会長の田嶋先生は、「報徳 九転十起人生塾」の塾長を務められ、地元小田原で「現代版の報徳思想で地域起こしを行う」活動を推進されています。
 これからは「競争」ではなく「共創」の時代であり、小田原の2つの問題を取り上げて、それらに対する取り組みについて紹介して頂きました。一つは、生活保護受給者が増加していることです。ところが受給者の5%は就労できる人々であり、その人たちに働く場を提供することを考えられています。もう一つは、酒匂川の河床がこの20年の間で約2m上昇し、大雨による氾濫のリスクが高まっていることです。地域の人々、企業と協力し河床をきれいにする活動を推進されるそうです。小さなことから始め、実践することの大切さを説かれています。
 報徳の教え「”ありがとう”の反対は”あたりまえ”」「自分がやらねば誰がやる」「譲って損なく奪って益なし」ということばを教えて頂きました。


 次回、10月度の授業は、10月14日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は石川寿一先生(経営コンサルタント・富士フイルムOB・南足柄寺子屋塾代表)をお招きします。石川先生の講義タイトルは、「49年間で巡った世界106か所訪問の旅」です。