2019年6月11日火曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年6月度の授業

 令和元年6月9日(日)に6月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、先月に引き続き、渋沢栄一とその著書『論語と算盤』について学びました。
 『論語』の中に「子曰く、富と貴きとはこれ人の欲するところなり。その道をもってせずしてこれを得れば処(お)らざるなり。貧と賤とはこれ人の悪(にく)む所なり。その道をもってせずして、これを得れば去らざるなり」という言葉があり、その意味は「財産と地位とは世間の人が欲しがるものだ。しかし正しい方法で得たものでなければ、それにあぐらをかいているのはおかしい。貧乏や身分が低いのは、みんなが嫌がるものだ。でも、自分は悪くないのに貧賤な暮らしを送らざるを得ないとすれば、それは恥ずかしいことではない。」です。
 渋沢栄一が生前、論語の一節を変えて作った言葉「為君子商 無為小人商」は、「君子の商となれ、小人の商となることなかれ」と読みます。ビジネスで成果を上げるだけではなく、社会に貢献する志を持つのが君主であり、不義・不正を犯すくらいなら、あえて『富貴栄達』の道をとらない覚悟をもつことも君子の商であるということです。渋沢栄一が考えた言葉「議理合一」は、お金を儲けるのは、りっぱな仕事だが、きちんと道徳を守り、もしお金が儲かったら、社会福祉など、そのお金を社会のために還元しなければいけない、という教えを説いています。

【第二時限】窪田哲夫先生(元拓殖大学日本文化研究所客員教授)

 今回は、窪田先生の故郷、新潟県長岡について紹介して頂き、幕末に活躍した長岡の英傑「河井継之助」について学びました。
 河井継之助は、近代的合理主義の考え方を持ち、武士として、長岡藩の重臣として、新政府軍に対抗する道を選んだ英雄的な人物です。江戸をはじめ、遠くは長崎まで遊学の旅に出て、歴史や世界の動き等、物事の原理を知ることに努め、藩政改革を実践しました。「武装中立」の考えを持ち、新政府軍との談判で戦闘を断りますが決裂、北越戦争へと突入します。河井継之助率いる長岡藩は、近代兵器を駆使して新政府軍と約3ケ月にわたって戦い、この戦いで負傷した継之助は42歳で亡くなりました。
 授業では、河井継之助が残した多くの名言の中から、「一忍可以支百勇、一静可以制百動」「民は国の本、吏は民の雇い」「漫然と多読するも、何の益かあらん。読書の功は細心精読するに在り」「志の高さ低さによって、男子(ひと)の価値がきまる」などについて解説して頂きました。有名なことば「やって見せ、言って聞かせて、させて見て、讃めてやらねば、人は動かじ」は、山本五十六が河井継之助のやり方を表現したものだそうです。
 窪田先生は、今回の授業を通じて、「ふるさと」やふるさとの人物、そして両親、兄弟、仲間を大切にしましょう、尊敬する人物を持つこと、とおっしゃっていました。


 次回、7月度の授業はありません。6月30日(日)13:15~小田原市生涯学習センターけやきホールにて特別公開講座を行います。詳細は、「特別公開講座尾のお知らせ」をご覧ください。

2019年6月7日金曜日

特別公開講座のお知らせ

 令和元年6月30日(日)に特別公開講座を開催いたします。事前申し込み不要、参加費は無料です。多数の方のご参加をお待ちしています。


2019年6月5日水曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年5月度の授業

 令和元年5月12日(日)に5月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月の授業のテーマは、新しい一万円札に登場する渋沢栄一と『論語』です。渋沢栄一は、1840年に現在の埼玉県深谷市の豪農の子として生まれました。若い頃に江戸幕府に仕え、明治時代には大蔵省に勤務、その後、第一国立銀行をつくりました。現在の東京ガスや東京海上日動火災保険など約470社の会社の設立にかかわった実業家です。
 1916年に出版された書物『論語と算盤』の中で、渋沢栄一が取り上げている『論語』の一節を学びました。「子路曰く、民人あり、社稷(しゃしょく)あり。なんぞ必ずしも書を読みて、しかる後に学ぶとせん。」は、孔子の弟子の子路のことばで、「人々がいて、郷土のお社があるような環境であれば、現実から十分に学ぶことができます。どうして書物を読むことだけが、学ぶと言えるのでしょう。」という意味です。口ばかりで実践できないものはダメだということです。渋沢栄一は、机にすわって読書するだけを学問と思うのは間違っている、勉強を続けることと同時に生活の中から学ぶことを心がけるよう説いています。

【第二時限】関雅樹先生(元JR東海専務 新幹線鉄道事業本部長)

 関先生は、JR東海で新幹線鉄道事業本部長を務められ、現在、双葉鉄道工業の社長としてご活躍中です。授業では「東海道新幹線の技術-安全・進化する鉄道技術-」と題して、日本の大動脈である東海道新幹線とその技術について解説して頂きました。
 東海道新幹線の最高速度は285km/h、1日の利用者数は47万人、運行本数は368本にも上ります。たゆまぬ進化により、1964年の開業以来、乗車中のお客様の死傷事故はゼロ、1列車あたりの平均遅延時間は0.9分です。これは、安全、安定輸送を最優先し、ハード・ソフト対策に積極的に取り組んできた成果、社員の士気・規律・練度により裏打ちされた成果であるということを教えて頂きました。
 授業の後半では、動画を用いて地震対策の技術を解説して頂き、高架橋柱のせん断破壊を抑制するために開発された、鋼板による耐震補強やダンパーブレース工法と呼ばれる技術、列車の脱線を防止する脱線防止ガード、軟弱地盤対策のシートパイルについて学びました。また、東海道新幹線の路線には50ケ所の地震計、周辺の広範域には21ケ所のテラス(早期地震警報システム)が設置され、地震を検知して列車を緊急停止させることができるそうです。


 次回、6月度の授業は、6月9日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は窪田哲夫先生(元拓殖大学客員教授)をお招きします。窪田先生の講義タイトルは、「幕末の英傑「河合継之助」と佐藤一斎の「言志四録」-私に影響を与えてくれた故郷、長岡の歴史的人物-」です。