2018年11月28日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年11月度の授業

平成30年11月11日(日)に11月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、栗田先生がこれまでの授業でも何度か紹介された「歴史上のある時期に違う国では何があったか」という見方について教えて頂きました。
 明治新政府が成立したのは1868年です。その1年前、スウェーデンの化学者ノーベルがダイナマイトを発明しました。アメリカでは1861年~1865年の4年間にわたって南北戦争があり、勝利を収めた北部の側を指導した第16代大統領リンカーンが戦争直後に暗殺されています。明治新政府をつくった西郷隆盛や大久保利通、坂本龍馬は、ノーベルやリンカーンと同じ時代に生きていたということです。
 スウィフトというアイルランド生まれの人が書いた『ガリバー旅行記』には、ガリバーが冒険の途中、1709年5月に船で日本に立ち寄り、エドで皇帝に拝謁したとあります。もちろん架空のお話ですが、その年の5月、6代将軍家宣が将軍の座に就いています。ガリバーが会った皇帝は家宣ということになります。
 フランスのSF作家ジュール・ヴエルヌが書いた物語『80日間世界一周』には、青年フォグが世界一周の途中1872年に横浜に立ち寄ったとあります。新橋と横浜を結ぶ鉄道(陸蒸気)が開通して間もない頃です。物語の上でも、歴史年表を広げると面白い知識に出会えることが分かります。

【第二時限】鬼頭宏先生(静岡県立大学学長)

 鬼頭先生は、静岡県立大学学長を務められ、歴史人口学を研究されています。授業では、日本の人口問題、人口から読む日本の歴史について教えて頂きました。
 現在の日本では、建設や介護など多くの業種での人手不足を背景に、外国人労働者の受入が国会の争点になっています。日本の総人口は2010年をピークに減少し、最新の人口推計では2100年に6千万人になると予想されています。問題となるのは人口構成の偏りです。15~64歳の生産年齢人口の減少と65歳以上の高齢者の増加は2050年頃まで続き、自治体消滅の可能性などが懸念されています。
 人口転換、すなわち出生率と死亡率の低下によってもたらされる少子高齢化社会の課題は「新しい文明システムへの転換」であると先生は仰っています。人口減少は、現代の日本人にとって経験のないことですが、日本の歴史上、初めてのことではありません。過去の人口推移を見ると、縄文社会(縄文時代)、稲作農耕社会(弥生~鎌倉)、経済社会化した農業社会(室町~幕末)には、何れも後半期に人口が減退しており、文明システムの転換が図られています。明治以降の産業社会も、平成になり人口衰退期に入っており、新しい文明システムの構築が求められているのです。


 次回、12月度の授業は、12月16日(日)(第3日曜日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は岡本彰夫先生(奈良県立大学客員教授、元春日大社権宮司)をお招きします。岡本先生の講義タイトルは、「生まれ変わって来た子の話-勝五郎再生紀聞・お夏組成物語-」です。