2019年9月14日土曜日

小田原寺子屋スクール 令和元年9月度の授業

令和元年9月8日(日)に9月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、現代の情報化社会に通じる、中国の3つのことばを学びました。
 一つ目の「流言は知者に止(とど)まる。」は、古代中国の思想家、荀子のことばで、無責任な噂や根拠のない話が横行しても、ものごとを冷静に判断できる人には通用しない、という意味です。流言は「詩経」や「書経」にも登場する根も葉もない噂のことで「流言蜚語」と4文字で表現することもあります。「蜚」という字は、ゴキブリを意味します。アメリカでは、トランプ大統領が大型ハリケーン「ドリアン」の進路予想をめぐって根拠のない話をこしらえ、広めているというニュースが報じられています。一方のトランプ氏は、フェイク(偽)ニュースが自身の予想を認めようとしない、と主張しています。栗田先生は、様々な情報に接する時、自分はどう考えるかが大切で、私たち一人ひとりが「知者」にならなければいけいないとおっしゃっています。
 二つ目のことば「好事は門を出でず、悪事は千里を行く。」(『北夢瑣言』より)は、善いことをしてもあまり世間に知られないが、悪事はたちまち千里の彼方まで知れ渡る、という意味です。三つ目のことば「囁き千里」(『淮南子』より)は、ないしょで話したことでも、すぐに人々に知られてしまう、という意味で「ささやき八丁」「こそこそ三里」ということばもあります。

【第二時限】伊藤みろ先生(フォトアーティスト・著述家、文化芸術プロデューサー)

 伊藤先生は、ドイツとアメリカで永住権を取得され、フォトアーティスト、映像作家として世界の写真文化の第一線で活躍されています。現在取り組まれている文化芸術プロジェクトは、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ事件」をきっかけに、平和に貢献をしたいとの願いが出発点になっているそうです。アートを通して、世界の人々が「ひとつ」であるという人々の心のつながりを訴えていきたいとおっしゃっています。
 授業では、法隆寺回廊の柱やモナリザの微笑みと同じ起源をもつ中宮寺の菩薩像など、奈良には古代ギリシャ文化の影響を受けた建築物や仏像があることや、シルクロードと仏教文化の広がり、奈良・東大寺の大仏さまの起源などについて、石仏・仏像の写真を交えながら解説していただきました。伊藤先生から生徒たちへのメッセージは「世界の平和に役立つ人になってほしい」です。
 授業の最後に、バレエ・ダンサーの新井春双氏に伎楽バレエを披露していただきました。

 次回、10月度の授業は、10月13日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は北岡和義先生(元日大教授、アメリカ在住27年)をお招きます。北岡先生の講義タイトルは「なぜアメリカを目指したのか~戦後日本史の断面」です。