2018年12月19日水曜日

小田原寺子屋スクール 平成30年12月度の授業

平成30年12月16日(日)に12月度の授業を行いました。

【第一時限】栗田亘先生

 今月は、はじめに『論語』の文章で「故きを温(たず)ねて新しきを知る 以て師と為るべし」を学びました。意味は、「昔のものごとをよく調べ、研究して、そこから現代に応用できる新しい知識や考え方を見つけ出す。そうした姿勢が大切で、そういう姿勢でなければほかの人を教える先生にはなれない。」です。「論語読みの論語知らず」は、立派な本を読んでも、頭で分かったつもりになっているだけで、それを実行できない人のことを言います。栗田先生は、本を読んで、自分で考えることの大切さを説かれています。
 授業後半では、ことわざや言葉を5つ学びました。「木を見て森を見ず」は、中国の古典にある言葉のようですが、実は英語のことわざがモトになっています。細かい点だけに注意して、大きく全体をつかまない、という意味です。中国には「鹿を逐う(おう)者は山を見ず」という言葉があり、利益を得ようと熱中する人は、ほかのことが目に入らない、という意味です。「一石二鳥」は、明治時代に作られた四字熟語で、欧米のことわざがモトになっています。中国にも同じような意味の言葉で、日本でも、よく使われている「一挙両得」があります。また、一石二鳥や一挙両得とは反対の意味で「二兎を逐う者は一兎も得ず」がありますが、これはローマ時代のことわざがモトになっています。このように、ことわざや言葉の出所についても教えて頂きました。

【第二時限】岡本彰夫先生(奈良県立大学客員教授、元春日大社権宮司)

 岡本先生は、かつて春日大社権宮司を務められ、現在は奈良県立大学客員教授、東京で人材育成の塾長としてご活躍中です。授業では、今から200年程前の江戸時代に、多摩地方で本当に起きた不思議な事件について解説して頂きました。多摩郡窪村にいた藤蔵という男の子が、文化7年、6歳の時に疱瘡で亡くなります。それから5年後の文化12年、多摩郡中野村に勝五郎という男の子が生まれます。勝五郎は、8歳の時、自分の前世は窪村の藤蔵だと姉のふさに話します。また、自分が生まれる前に家の中の様子を見ていて、母が働きに出る話を知っているなど、勝五郎の生まれ変わりの話は評判になり、中野村の領主だった多門傳八郎は勝五郎を呼んで話を聞きます。その話が平田篤胤の『勝五郎再生記聞』という書物に記されています。
 また、兵庫県の豊岡に、一度亡くなったお夏という女性が息を吹き返す『お夏蘇生物語』というお話があります。お夏は、母親が翌年、自分は4年後に亡くなることを言い当てます。お夏は、生まれ変わる前に極楽浄土を見てきたと言います。
 このように、世の中は目に見えることがすべてではなく、神様やご先祖様は人が見ていないところを見ておられるということです。人の命ほど大切なものはなく、自殺は絶対にしてはならない。「上へ上へと伸びるより、奥へ奥へと歩みなさい」とは、地位など上には限度があるが、奥には際限がなく、深みのある人になって豊かな人生を歩んでください、という教えです。


 次回、平成31年1月度の授業は、1月13日(日)を予定しています。第一時限は栗田亘先生、第二時限は吉川伸治先生(神奈川県内広域水道企業団企業庁・元神奈川県副知事)をお招きします。吉川先生の講義タイトルは、「飲水思源ー神奈川の水道を考えるー」です。